RevOps とは(営業とCS統合)—収益に直結する“横断オペレーション”のつくり方(2025年版)

RevOps とは(営業とCS統合)—収益に直結する“横断オペレーション”のつくり方(2025年版)
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マーケ、営業、カスタマーサクセス(CS)、そして財務までを一本の“収益オペレーション”で束ね、顧客獲得から契約、オンボーディング、定着、更新、拡大までを同じ仕組みで回す考え方がRevOps(Revenue Operations)です。 部門ごとに最適化された個別のやり方を寄せ集めるのではなく、共通のプロセス・データ・指標・ツールを用意し、部門横断で意思決定と改善を進めます。 これにより、パイプラインの質や予実精度が上がり、LTVやNRRといった“事業の体力”を左右する指標を底上げできます。営業とCSを同じ地図の上にのせて動かす、というイメージを持つと腹落ちしやすいはずです。

RevOps とは(営業とCS統合の基本)

RevOpsの定義と対象領域

RevOpsは、収益に関わる活動を一つの傘で統合し、マーケ、営業、CS、財務を共通のプロセスとデータで動かす枠組みです。単に“仲良くする”のではなく、意思決定や改善の単位を横断に切り直すところが肝になります。

顧客接点で使う定義とKPI、システム、ワークフローを共有し、各部門が同じ情報を見て同じルールで動く状態を目指します。

セールスフォースはRevOpsを“すべての収益関連活動を束ねる戦略フレームワーク”と説明し、ガートナーも“マーケ・営業・カスタマーサービスの収束”として位置づけています。言い換えると、縦の最適化から横の最適化に舵を切る取り組みです。

Sales Ops・CS Opsとの違いと関係

Sales Opsは主に“売る”活動のオペレーション最適化、CS Opsは“使い続けてもらう”活動の最適化を担当します。RevOpsはそれらを上位概念として束ね、顧客が接する前後左右の動線を一体で設計します。

例えば、MQL→SQL→受注→オンボーディング→活用→更新・拡大までを一貫したSLAでつなぎ、どの地点でも同じデータ定義で計測します。結果として、管轄の違いで“受け渡しが詰まる”ことが起きにくくなり、部門目標の齟齬による逆インセンティブも薄まります。

RevOpsがもたらす効果(予実精度・LTV/NRR・コスト)

部門間のハンドオフが滑らかになるほど、パイプラインの歩留まりは改善します。定義がそろえば予実精度が上がり、誤差を埋めるための無駄な活動が減ります。

CSが早期から関与することでオンボーディングの設計が現実的になり、NRR(純売上継続率)やアップセルの機会を取りこぼしにくくなります。権限とワークフローを横断化すると、重複投資の削減やツール統合も進みます。こうした“収益ライフサイクル全体の最適化”がRevOpsの価値です。

出典:Salesforce「What Is Revenue Operations (RevOps)?」
出典:Gartner「Revenue Operations(Sales Glossary)」
出典:Highspot「A Complete Guide to Revenue Operations」

RevOpsの組織設計(役割と体制のつくり方)

中核機能:Operations/Enablement/Insights/Systems

RevOpsを機能で切ると、

①Operations(プロセス設計・SLA・ハンドオフ管理)②Enablement(人とプレイの生産性向上)、③Insights(データ分析・予実・要因分解)、④Systems(CRMや連携基盤の標準化と運用)の四つが中核になります。

とくにCS側のデータ(利用状況・健全性スコア・更新結果)を営業の世界に持ち込み、逆に営業の失注学習をマーケ・CSに返す循環を設計できるかが成果を分けます。業務が分断されているほど、まずは“誰がどのKPIを守るか”“どのデータが正とするか”の合意から始めるとスムーズです。

体制パターン:集中型・分散型・ハイブリッド

集中型は、RevOps機能を一つのチームにまとめ、全社標準を素早く浸透させる方式です。分散型は各事業や地域にOpsを置き、現場適合を優先します。ハイブリッドは標準(定義・指標・共通ツール)を本部が持ち、現場Opsがローカル特性に合わせて運用する形です。

会社のフェーズや多拠点の有無に応じて選びますが、どの方式でも“共通定義とデータの一元化”だけは外さないことが肝心です。セールスフォースは組成と運用の勘所として、役割の重複排除と権限線の明確化を強調しています。

求められるスキルとロール定義

RevOpsには、業務設計、データ分析、システム理解、現場コーチングの“横断スキル”が求められます。ロールで言えば、RevOpsリーダー(方針とKPI)、Revenue Operations Manager(SLA・プロセス)、Revenue Systems(CRM・連携・権限)、Revenue Insights(ダッシュボード・予実・実験設計)、Enablement(プレイブック・トレーニング)が代表例です。

採用では、部門横断プロジェクトの推進経験や、計測設計から施策改善までの一連の流れを語れるかを見るとミスマッチを避けられます。

出典:Revenue Operations Alliance「What is RevOps?(機能の整理)」
出典:Salesforce Blog「The Right Way to Build Your First RevOps Team」
出典:Highspot「A Complete Guide to Revenue Operations」

RevOpsのプロセスとデータ設計

共通ライフサイクル(獲得→定着→更新・拡大)

RevOpsでは、認知・獲得から商談、受注後のオンボーディング、活用(アダプション)、更新、拡大(アップセル/クロスセル)までを一続きの“収益ライフサイクル”として扱います。

営業が作った期待値をCSが現実に着地させ、CSが見つけた追加価値の可能性を営業が再び拾う。この循環を回すために、フェーズの定義(入口・出口条件)とハンドオフの責任を明確にします。セールスフォースはこの全体像を“Revenue Lifecycle Management”として整理しており、指標やプロセスのひも付けが参考になります。

コア指標(パイプライン・勝率・NRR・フォーキャスト)

上記の各フェーズには、係数で管理できるKPIを置きます。獲得側ではパイプラインカバレッジやステージ進展率、営業では勝率や平均セールスサイクル、CSではオンボード期間、アダプション率、NRR、更新率などが典型です。

さらに、横串でフォーキャスト精度を管理し、誤差の要因(案件の健全性・データの欠損・定義の解釈ズレ)を分解します。“同じ定義で測る”ことが、改善の速度と質を左右します。

データ基盤とガバナンス(CRMを“唯一の真実”に)

データの“正”をどこに置くかは最初に決めます。実務ではCRMを唯一のソース・オブ・トゥルースとして定め、マーケやCSのツールと双方向に連携します。

権限と変更履歴、監査ログ、SLA違反の検出など、ガバナンスの仕掛けを同時に設計します。定義書とデータ辞書をRevOpsの管理下に置き、全員が同じ言葉で会話できるようにしておくと、後工程の議論が建設的になります。

出典:Salesforce「Revenue Lifecycle Management」
出典:Salesforce「What Is Revenue Operations (RevOps)?(指標の整理)」
出典:https://www.highspot.com/blog/revenue-operations/

RevOpsの実装ステップ(はじめ方と進め方)

現状診断:サイロ・定義ズレ・データ品質

最初の一歩は、現場の“詰まり”を地図に描くことです。獲得からCSまでのハンドオフで何が止まっているか、定義は一致しているか、実務データは欠損や遅延がないかを洗い出します。

営業とCSが別のKPIを見ていないか、ダッシュボードの数字が部署ごとに違っていないかといった、日々の違和感がヒントになります。診断の結果は、SLA改訂やデータ修復のバックログに直結させると前に進みます。

設計:SLA・ハンドオフ・プレイブック・責任線

次に、リードから更新までの各接点で、入口・出口の基準(SLA)を明文化します。例えば“受注から7営業日以内にオンボーディングキックオフ”など、期限と責任主体を明確にします。営業・CSの双方で使うプレイブックを作り、状況別に“誰が何をいつやるか”をそろえます。定着後の拡大機会は、健全性スコアや使用量指標など“客観的なシグナル”をきっかけに起動するよう、アラートと担当アサインまで仕組み化します。

ツール:CRM/イネーブルメント/CSプラットフォーム/RLM

ツールは“働き方の型”を固める道具です。CRMを中心に、セールスイネーブルメント(資料・学習・コーチング)、CSプラットフォーム(ヘルススコア・更新管理)、RevOps全体の設計図としてRevenue Lifecycle Management(RLM)を組み合わせます。重要なのは、ツールの数ではなく“共通定義と同じデータの上で動くこと”。既存資産を活かしつつ、段階的に標準へ寄せるアプローチが現実的です。

出典:Gartner「Revenue Operations(トピックガイド)」
出典:Highspot「A Complete Guide to Revenue Operations」
出典:Salesforce「Revenue Lifecycle Management」

営業×CS 連携シナリオ(現場で効く使い方)

新規受注からオンボーディングへの“無摩擦”引き継ぎ

受注と同時に、CS側に必要な情報(期待成果、導入スコープ、リスク、関与者、成功基準)を自動で引き渡します。フォーマットを統一し、営業が約束した価値をCSが実装しやすい形に落とすことが大切です。

キックオフの期日や、初回価値(first value)到達までのマイルストーンをテンプレ化して、期日管理と責任線を明確にします。ここが整うと、オンボーディング期間の短縮と初期解約の抑制に効いてきます。

健全性スコアと更新・拡大の予兆検知

利用量や機能カバレッジ、サポート履歴、NPSなどからヘルススコアを作り、しきい値でアラートを出します。リスク兆候はCSが主導して対処し、成功兆候は営業へ連携して拡大提案につなげます。

更新90日前からの“逆算カレンダー”を共通で持ち、必要資料と関与者をプレイブックでガイドします。これにより、更新の抜け漏れやタイミングのズレが減り、NRR改善の再現性が高まります。

クローズドループ学習:マーケ・営業・CSの往復運動

CSが現場で得た“刺さる活用法”や“解約理由”を、RevOpsの場でパターン化し、マーケの訴求や営業資料に素早く反映します。

逆に、獲得時の反応が良かったメッセージは、CSのエネーブルメント教材やヘルプコンテンツへ落とし込みます。使用データと受注・更新結果をダッシュボードで同時に眺め、四半期ごとに“作る/直す/捨てる”を決めるサイクルが、組織の学習速度を上げます。

出典:Salesforce「What Is Revenue Operations (RevOps)?」
出典:Highspot「A Complete Guide to Revenue Operations」
出典:Winning by Design「The Operating Model for Recurring Revenue」 

まとめ

RevOpsは、各部門の“縦の最適化”を超えて、収益ライフサイクル全体の“横の最適化”を実現する取り組みです。営業とCSを中心に、マーケや財務を同じ定義・同じデータ・同じワークフローで結び、ハンドオフと学習の摩擦を減らします。はじめは定義とSLAの共通化、受注→オンボーディングの標準化、ダッシュボードの一元化といった基礎から。

そこにイネーブルメントとRLMを重ね、四半期ごとのクローズドループ学習を回せば、予実精度とNRRの改善が“当たり前”になります。組織の形やツールの数よりも、“同じ地図で動いているか”を常に点検する姿勢が肝です。

カテゴリー:営業・販売

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