キーエンスが徹底する「仕組み化の技法」で“誰でも結果が出る組織”をつくる――岩田圭弘氏セミナー・レポート

キーエンスが徹底する「仕組み化の技法」で“誰でも結果が出る組織”をつくる――岩田圭弘氏セミナー・レポート
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本記事は「“仕組み化がすべて”著者が解説!キーエンスが徹底する仕組み化の技法」セミナーの内容をもとに記しております。セミナーはオンライン上で無料で視聴できますので、こちらよりご覧ください。 「個人の才能に依存しない」「成果を出すことを組織全体で再現する」――キーエンスが貫いてきたこの姿勢が、圧倒的な成長の原動力となりました。組織を変えたい、成果を安定的に出したい、そう考えるすべての方に贈る必見のセミナーとなっております。

1. 仕組み化が求められる背景

キーエンスでは「才能ではなく行動の総和」で勝つ設計を構築しております。平均的な成果が上がれば、メンバーの数が増えるほど全体の成果も大きくなるからです。そのため同社は、ハイパフォーマー探しよりも、誰もが最短で勝ちパターンに乗れる仕組みを作り上げているのです。

1.1 スタープレイヤー依存の危うさ

スター社員が1人抜けただけで組織が傾くのは、ビジネスを“個の才能”という一本柱に頼っている証拠です。しかもスター本人は高負荷で早く疲弊しがちです。売上ノルマ、質問攻め、マネジメント──すべてが集中するためです。

仕組み化によって業務が特定の個人に集中する状態を解消し、チーム全体でリスクと負担を分担できるようになります。これは、個人への負担や依存を減らすことで組織の安定性を高めると同時に、誰もが同じように成果を出せる体制を整えることで、組織全体の成長スピードを加速させることにもつながります。

2. キーエンス式仕組み化とは 4 STEP

岩田氏は仕組み化を「標準化→浸透→振り返り→責任と権限」の4つのステップで説明しています。どれか1つが欠けても残りは空回りしてしまいます。

2.1 STEP 1:標準化 ― 行動をそろえる

標準化の要点は「全員の行動をそろえる」ことです。「全員が一定の成果を出せる」ようにするための仕組み化では、標準化が第一歩になります。標準化の流れは、①課題を洗い出す→②課題の対策となるルールを作る→③ルールを明文化することです。

ここでルールを明文化する際のポイントとして、「数値化」「現実性」「想定効果」「対象範囲」を組み込むことが重要です。

例えば、数値化において「9時に出社すること」というルールでは、来ればよいのか、着席までする必要があるのかなど解釈の違いが生じてしまいます。そこで、たとえば「8時45分までに着席して業務を開始すること」と定義すれば、具体的な数値が設定され、解釈の余地をなくせます。

2.2 STEP 2:浸透 ― 実行不足を防ぐ

企業が仕組み化を失敗する最も大きな要因は「実行不足」にあります。せっかく仕組みを構築してもそれが実行されなければ意味がないのです。

そのため、「浸透」は新しい仕組みを導入する際に最も重要なフェーズであると言えます。浸透する際の流れは、①周知する→②ルールの見える化をする→③結果報告の場を作る、です。

「周知」において、目的と意義を腹落ちさせることが重要です。Whyが腑に落ちない限り、人は動きません。そのために、ルールの目的を明確化し、社内ルールの影響範囲を見極め、適切な周知方法を検討します。

次に「ルールの見える化」により、常にルールが見えている状態にすることが重要です。ルールを日々確認することでルールが形骸化することを防ぎます。最後に「結果報告の場を作る」において、ルールの効果検証と改善点を見出します。

この「周知→見える化→報告」の循環が回り始めると、ルールは“紙の規程”から“日常の習慣”へと昇華させることができます。

2.3 STEP 3:振り返り ― 形骸化を防ぐ

振り返りを行わないと、ルールがなぜ存在するのかわからなくなり、結局ルールが守られなくなってしまいます。また、ルールを見直さないことで無駄なルールが増えていき、「またルールが増えた」と不満が出てしまいます。定期的に振り返りを行い、適正に機能しているかどうか確認することで、ルールが形骸化することを防ぎ、組織の生産性を高めることができます。

まず、ルールの「目標」と「結果」を測定することが重要です。ルールの運用結果が当初の狙い通りかどうか確認し、もし目標に届いていなければそのギャップを明確にします。

次に「結果」の「原因」を分析します。ルールの運用効果が目標に達していなかった場合、分析することでその原因を突き止める必要があります。

最後に、ルールが成功したのか、失敗したのかを見極めます。原因分析の結果、ルールの一部に問題があることが分かれば、そのルールを廃止するか、改善を加えます。一方、ルールが順調に機能していれば、そのまま継続します。

注意点として、成果が出ないときにいきなり個人の責任を問うことはNGです。まずは仕組み自体に問題がなかったかどうかチェックします。次に、仕組み化の伝え方が適切であったか、その浸透に問題がないかどうかチェックします。次に、成果が上がらなかったメンバーが仕組みを守っていたかどうかチェックします。最後に、そのメンバーの能力や適性をチェックします。

2.4 STEP 4:責任と権限 ― 創業者がいなくても動く組織へ

最後に、仕組みを維持・改訂する責任を“名前”で割り当てます。誰が、どの頻度で、どの手順でルールを見直すか――ここまで文書化して初めて、トップが現場のボトルネックにならない自走型組織ができ上がります。

キーエンス創業者の滝崎武光氏が社長を退いても年平均20%成長を24年間維持できた背景には、判断基準が明確に定められており、部門長クラスの社員であれば自律的に意思決定を下すことができるようになっており、意思決定プロセスを徹底的に仕組み化していることにあります。

3. まとめ

キーエンスは、個人の才能ではなく行動の総和で成果を最大化するために、標準化・浸透・振り返り・責任と権限の四つのステップを絶え間なく回しています。

このサイクルを通じてルールは紙の上の規程から日常の習慣へと定着し、平均値が底上げされることで組織全体のパフォーマンスが持続的に向上します。その結果、創業者が現場を離れても自律的に動く組織が維持され、高成長を長期にわたり可能にしているのです。

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