ハイブリッドセールスモデルとは?2025年最新の営業手法について解説

ハイブリッドセールスモデルとは(背景と定義)
ハイブリッドセールスモデルの全体像
ハイブリッドセールスは、対面(フィールド)、非対面(インサイド・オンライン会議)、セルフサービス(eコマース/デモサイト)を、顧客側の“やりたい進め方”に合わせて組み合わせる発想です。チャネルの切替は営業都合ではなく、購入意思決定の節目に紐づけます。
たとえば、初期の情報探索はセルフサービス、要件整理はリモート、意思決定前の最終確認は現地——といった具合に、負担を減らしながら納得感を積み上げる順路を設計します。ハイブリッドは“混ぜる”より“つなげる”ことが本質で、接点が変わってもストーリーとデータが途切れない状態を目指します。
B2Bバイヤーの“非線形”行動とチャネル選好
B2Bの購買は、問題認識→解決策探索→要件整理→サプライヤ選定という“買い手の仕事”を行き来しながら進みます。各ステップで、デジタルと人が入り混じるのが実態です。ガートナーは、この非線形性を前提とした“低負担の購買体験”設計を提唱しています。
また、マッキンゼーのB2B Pulse(2024)では、50万ドル超の高額発注でも、セルフサービスやリモートでの購買に対する許容度が大きく上がっていると報告されています。つまり、チャネルの幅と深さを両立させる設計が、いまは競争力に直結します。
ハイブリッド化で変わる成果(成長率・パイプラインの質)
ハイブリッドは“コスト削減のためのリモート”ではありません。勝っている企業は、対面とオンラインを使い分け、買い手の望むスピードと深度で関わることで、成長率やパイプラインの質を底上げしています。
2024年の調査では、ハイブリッドな働き方・売り方を採用した企業の方が、非ハイブリッドに比べ2桁成長の比率が高いという結果も示されました(マッキンゼー発表内容の報道)。現場の体感とも合致する傾向です。
出典:McKinsey「Five fundamental truths: How B2B winners keep growing」
出典:Gartner「B2B Buying: How Top CSOs and CMOs Optimize the Journey」
出典:Digital Commerce 360「More B2B buyers are willing to spend big per online order」
設計:ハイブリッドセールスモデルを機能させる要素
フロント(インサイド×フィールド×デジタル)の役割分担
出会いの母数を増やすのはデジタル(広告・コンテンツ・コミュニティ)とインサイドの役割です。価値仮説の検証やテーマの掘り下げは、リモートを活かしつつ、キーパーソンの合意形成や現地でしか拾えない文脈はフィールドで詰める。
セルフサービスは“営業の省略”ではなく、検討を前に進める助走路として設計します。マッキンゼーの示す“どこでも・いつでも・オムニチャネル”の原則は、この役割分担の背骨になります。
ジャーニー別の“最適接点”設計と手戻り防止
問題認識〜要件整理〜選定の各局面で、買い手が“何に不安を感じ、何を確かめたいか”は異なります。
買い手の仕事ごとに、どのチャネルが低負担かを先に決め、接点を切り替えるたびに情報と合意が引き継がれる仕組み(ノート、メタデータ、次の一手の提示)を用意します。非線形に戻ったとしても、同じ論点を蒸し返さなくて済むように、前回の合意と残課題が“ひと目でわかる画面”を整えます。
KPIとモニタリング——チャネル横断で一貫して測る
“面”で見なければ、ハイブリッドの効果は測れません。セッション数やメール返信率などチャネル個別の指標に加え、ステージ進展率、勝率、平均セールスサイクル、高額案件のセルフサービス比率、オンライン→対面の転換率といった“横断KPI”を置きます。
2024年B2B Pulseは、高額購買でも非対面が増えている事実を示しました。ここをウォッチし、買い手の許容度に合わせてセルフやリモートの役割を広げていくのが、モデルの更新の勘所です。
出典:McKinsey「B2B sales: Omnichannel everywhere, every time」
出典:Gartner「B2B Buying Journey」
組織:チーム編成とスキル、権限線の引き方
役割の再設計——チャネル起点ではなく“買い手起点”に
“フィールドは現場、インサイドは電話”のような固定観念を捨て、買い手の必要に応じて役割を横断させます。マッキンゼーは、勝っている企業ほどチャネルと人材の紐づけをほどき、必要な時に必要な人が出られる設計に移っていると指摘します。肩書きではなく“出番”で動けるよう、責任線はフェーズ基準で引き直します。
スキルと育成——オンラインの質、対面の深度、双方の可変性
オンラインでは、短時間で論点を絞り、画面越しでも“相手の文脈”に合わせた提示ができる力が求められます。対面では、現地の制約・運用のクセに踏み込み、合意形成を主導する力が効きます。両者を行き来する可変性を育てるために、録画レビューやロールプレイ、案件単位のコーチングを仕組みにします。
ガバナンス——定義・SLA・権限を“前提”として固定
ハイブリッドは接点が多いぶん、定義のズレが致命傷になりがちです。ステージ定義、入口・出口条件(SLA)、引き継ぎテンプレ、社外共有の権限・期限・監査ログを最初に固定し、システムで自動適用します。これにより、誰がどの接点から入っても、同じ品質で次の一手に進めます。
出典:McKinsey「Five fundamental truths: How B2B winners keep growing」
出典:Harvard Business Review「B2B Sales Culture Must Change to Make the Most of Digital Tools」
出典:Gartner「Future of Sales」
実行:ハイブリッドセールス モデルの運用シナリオ
新規開拓の型——意図シグナル→価値検証→現地評価
まずはデジタルの足跡(検索・閲覧・イベント)から“いま興味が高い論点”を拾い、短い価値検証セッションをオンラインで組みます。
合意が得られたら、現地で運用制約の確認や導入後の成功条件を詰める。接点の“階段”を小刻みに設計し、各段ごとに次の合意を作ることで、距離を縮めます。
既存深耕の型——利用データ→エグゼクティブ合意→現場浸透
CSが持つ利用データや健全性スコアから拡大機会を抽出し、オンラインで価値の仮説を合わせます。
投資意思決定にかかわる役員との合意形成は対面で行い、その場で現場展開の段取りと責任者を決める。オンラインと対面を“役割”で分けると、拡大の再現性が上がります。
イベント連動の型——デジタル×フィジカルの往復で確度を上げる
見本市や自社会議は、ハイブリッドの腕の見せどころです。来場前のオンライン接点で論点を温め、会場では現物や関係者を通じて“確証”を得てもらう。
終了後1週間はオンラインで意思決定者だけに的を絞ったフォローを当て、温度が上がったアカウントに対面の技術・運用レビューを差し込む。イベントの価値は、オンラインとの往復で倍化します。
出典:Gartner「B2B Buying Journey」
出典:McKinsey「Five fundamental truths(2024 B2B Pulse)」
出典:Forrester「The Global State of B2B Events(2024)」
ツールとデータ:CRMを“唯一の正”に、周辺をつなぐ
CRM/MA/EC/CSの役割とデータ動線
ハイブリッドの実装は、CRMを“唯一の正(single source of truth)”に据えるところから始めます。MA(マーケ自動化)で接点を作り、EC/セルフサービスで自己解決を促し、CSプラットフォームで活用状況を可視化しつつ、すべての接点データをCRMに戻す。定義とIDを一貫させることで、チャネルを跨ぐ判断が可能になります。
セールス実行基盤(インサイド/外勤支援)とナビゲーション
インサイドの活動記録、シーケンス、通話録音、対面の訪問計画や現地メモまで、同じ案件の“連続した物語”として残します。オンライン営業の定義や役割は、この数年で明確になり、ツール側のベストプラクティスも揃ってきました。
営業個人の勘に依存せず、状況に応じた“次の一手”が出てくるナビゲーションを整えると、ハイブリッドの手触りが一気に良くなります。
ダッシュボードの原則——一枚の画で判断できるまで整える
“チャネルごとのKPIは良いが、案件は進んでいない”という事態を避けるため、アカウント/案件単位で、チャネル横断の進展・合意事項・残課題を一目で見られる画面を用意します。週次の予実・四半期のレビューは、この“一枚の画”を起点に行い、定義のズレやデータ欠損をその場で修復していきます。
出典:Salesforce Blog「What is Inside Sales?(2024)」
出典:McKinsey「Five fundamental truths(2024 B2B Pulse)」
出典:Gartner「Future of Sales」
まとめ
ハイブリッドセールスモデルは、オンラインと対面の“良いとこ取り”ではありません。買い手の仕事に合わせて接点を切り替え、物語とデータを途切れさせないためのオペレーション設計です。設計ではジャーニー基準で最適接点を決め、実行では合意と引き継ぎを確実に運ぶ。
組織では役割を可変にし、定義とSLAを固定してブレを減らす。ツールはCRMを中心に“同じ定義・同じデータ”で動かし、ダッシュボードを一枚にまとめる。ここまで整うと、対面の強みもオンラインの速さも、矛盾せず同居します。2025年、勝っているB2B組織はこの“つなぎ切る力”で差をつけています。
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