営業DX 事例(AI活用)――国内外の最新ケースから学ぶ、成果の出し方(2025年版)

営業DX 事例(AI活用)――国内外の最新ケースから学ぶ、成果の出し方(2025年版)
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営業DXのAI活用は、“便利な自動化”の域を超えています。会議要約から提案書の骨子作成、社内ナレッジ検索、案件の次アクション提案まで、現場の判断を後押しする道具として浸透し始めています。 国内では大手行や保険各社が全社スケールで運用を開始し、時間削減と成約率の底上げを両立。海外でも大手金融はアドバイザー支援や社内アシスタントを現場の標準装備にしており、横展開の要点が見えてきました。単発導入ではなく、プロセス全体を“エージェント化”する設計が鍵です。

営業DX 事例(AI活用)の全体像と最近の潮流

生成AIの使いどころ(要約/文書作成/検索)

営業DXにおける生成AIの出番は、大きく「要約・記録」「文書・提案書の草案化」「社内ナレッジ検索」に分かれます。

会議や面談の音声からアクションを抽出して記録が整えば、次の一手を決めるスピードが上がります。提案書の骨子をAIに起こさせ、担当者は事実確認と表現の磨き込みに専念する。社内規程や実績資料の横断検索でエビデンスを素早く揃える。こうした“下ごしらえの高速化”が、のちの成約率を支える土台になります。

KPIに直結する効果(時間削減・成約率・パイプライン)

まず効くのは“時間をどれだけ返せたか”です。パナソニック コネクトは2024年の生成AI活用で年間44.8万時間の削減を公表し、1回あたりの削減時間やユニークユーザー率の伸びまで示しました。

時間の可視化は投資判断と現場の納得に直結します。次に狙うのは、成約率やパイプラインの厚み。国内大手行の取り組みでは、見込み顧客の獲得活動が10倍、コンバージョン率が30%改善の可能性といった“売上の変化”を示すデータも出始めています。数字が伴うほど、経営の意思決定が加速します。

実装の前提(セキュリティと現場運用)

成果が出る組織は例外なく“守りの整備”を先に進めています。データの取り扱い、モデル更新、出力の検証、人が最終判断する運用ルール。さらに、使う側のトレーニングと、“何に効くのか”を肌感で理解できる導入支援。SMBCは生成AIの大規模投資枠を設定し、「AI-CEO」や社内AIアシスタントを展開。ガバナンスとユースケースの両輪で、横展開の速度を落とさない体制を整えています。

出典:パナソニック コネクト「生成AI活用で年間44.8万時間削減」
出典:Morgan Stanley「AI @ Morgan Stanley Debrief」
出典:SMBC「AI-CEOの開発と生成AI投資枠」

保険・金融の営業DX 事例(AI活用)

明治安田生命「MYパレット」で訪問準備と報告を効率化

全国約3万6000人の営業職員が使う“デジタル秘書”「MYパレット」は、訪問前の情報整理から訪問後の記録までをAIで支援します。顧客の属性や嗜好、地域イベントなど多様なデータを基に、話題の糸口や提案の焦点を示す。

現場は移動が多く、手入力の負担がネックになりがちですが、音声入力と最小ステップの記録動線で“使いどころ”を外しません。全社のAI基盤と接続しているため、資料や過去履歴にワンステップで到達でき、面談後の手戻りも減ります。

三菱UFJ銀行の法人営業—見込み客開拓10倍、CVR30%改善

法人向けの市場部門に生成AIを導入した結果、見込み顧客の獲得活動が10倍、コンバージョン率が30%改善する可能性が示されました。非構造データの要約や照合が速く、担当者の仮説立てと優先順位付けを前倒しできるのが強みです。

外部イベントで手の内を開示している点も、再現性の高い取り組みであることの裏付けです。効果が見込める領域に絞ってスモールスタートし、実測値で横展開する王道パターンです。

SMBCグループのSMBC-GAIとAI-CEOで提案プロセスを高度化

SMBCは「AI-CEO」をはじめ、社内AIアシスタント「SMBC-GAI」や提案書アシスト、営業ロールプレイ支援の構想まで含め、複数のユースケースを段階的に実装しています。

規制関連のリサーチや社内規程検索、経営ダッシュボード整備といった“横串業務”をAIで短縮しつつ、営業の現場では対話や提案の“質”に時間を配分できる設計です。投資枠の明確化とガバナンスの先行が、現場の安心感につながります。

出典:Impress/DIGITAL X「明治安田生命、営業職3万6000人のAIエージェント」
出典:IT Leaders「明治安田生命、生成AIの活用に300億円投資」
出典:三菱UFJ銀行 事例記事(EnterpriseZine)
出典:https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20250805_01.pdf

インサイドセールス/コンタクトセンターの営業DX 事例(AI活用)

三井住友カード×ELYZAで応対時間を最大60%短縮

問い合わせ対応は、正確さとスピードの両立が難題です。三井住友カードはRAG(検索拡張生成)を採用し、社内データを根拠にした回答草案をAIが提示。まずはメール対応から運用を開始し、年内にチャットへ展開。

最終的に応対時間を“最大60%短縮”の見込みと公表しています。現場の“手戻り”が減るため、顧客の待ち時間と業務負荷を同時に下げられるのがポイントです。

楽天コネクト Stormの自動要約で後処理を短縮

通話をリアルタイムで文字起こしし、クリック一つで要約を作る。こうした“後処理の自動化”は、平均後処理時間(ACW)の短縮に直結します。楽天コネクト Stormの「Machine Agent: TAS」は、要約・分析・モニタリングまで一体で提供するため、別サービスの寄せ集めに頼らず立ち上げやすい構成です。

導入のハードルを下げる設計は、コンタクトセンターの実務において非常に実利的です。

富士通のPoCでAHT/ACWを大幅削減

富士通のコンタクトセンター向け生成AI活用PoCでは、平均処理時間(AHT)と平均後処理時間(ACW)の大幅削減が実証されています。

ナレッジのグラウンディングやプロンプト設計、評価方法を含めた“運用の作り込み”をセットで提供し、本番導入の確度を高めるアプローチです。段階的な検証と、運用課題の見える化が、実装の失敗を減らします。

出典:三井住友カード×ELYZA プレス資料(PDF)
出典:楽天コネクト Storm「Machine Agent: TAS」
出典:富士通「コンタクトセンター 生成AI活用PoC」

ウェルスマネジメントの営業DX 事例(AI活用)海外編

Bank of America—全社AI展開とアドバイザー支援の両輪

Bank of Americaは、社員の9割超が社内のAIツールを日常的に活用していると発表しており、アドバイザー支援や商業銀行の準備業務の自動化など、職種別の使い方を整えています。

社内向けの層構造(検索・自動化・生成AI)を敷いたうえで、トップダウンのトレーニングを並走する運用です。消費者向けでは仮想アシスタント“Erica”が累計30億回超の対話を記録し、AI活用の裾野を広げています。

Morgan Stanley—AI @ Debriefで面談要約→Salesforce自動記録

Morgan Stanleyは、面談の同意取得を前提に、要点の抽出・フォローアップメール草案・Salesforce記録までを一気通貫で支援する「AI @ Morgan Stanley Debrief」を発表。

アドバイザーが会話に集中し、面談直後にサマリーを送れる体験は、商談の“熱”を保ったまま次ステップへ進めるうえで強力です。会議のたびに“ゼロから書く”手間を外し、前進の速度を均一化します。

グローバルの学びを国内の営業DXに落とし込む

海外事例に共通するのは、AIを“単発の自動化”ではなく「現場アプリ間の操作レイヤー」として設計している点です。記録・検索・作成が連続してつながると、担当者の思考を中断させずに済みます。

国内でも、既存CRMやコラボレーションツールにAIを後付けするだけでなく、プロセス全体を見直し、エージェント化の余地を見つける設計が定着とKPI改善の近道になります。

出典:Bank of America プレスリリース「AI Adoption by BofA’s Global Workforce」
出典:Bank of America プレスリリース「Erica 3 Billion Interactions」
出典:Morgan Stanley「AI @ Morgan Stanley Debrief」
出典:Business Insider「Morgan Stanley and BofAのAI活用解説」

全社展開で営業DXを底上げする事例(AI活用)

パナソニック コネクト—生成AI活用で年間44.8万時間削減

“まず業務時間を取り戻す”ことにフォーカスした好例です。文章生成に留まらず、画像・ドキュメント活用に広げ、1回あたりの削減時間も拡大。

ユニークユーザー率の伸びが示す通り、現場で“自然に使われる”状態を作り、スキル向上と活用範囲の拡大が好循環しています。営業・マーケのアウトプット作成も対象に含め、部門横断でボトルネックを面で解消しています。

楽天グループ—社内AI普及と“草の根”での現場変革

楽天は専用の社内AI環境を整え、開発部門以外のメンバーも安心して使える土台を用意。KPIベースで成果を測りながら、イベントや“プロンプト選手権”などで文化づくりも並走しています。

トップダウンとボトムアップを両立させることで、現場のアイデアがユースケースに育ち、横展開のスピードが落ちません。

金融大手の投資枠設定とユースケース創出(MUFG/SMBC)

MUFGは統合報告書でAI業務実装数やデータ基盤の整備をKPIとして開示し、着実な実装状況を示しています。SMBCは生成AIの投資枠を公表し、提案支援やロールプレイ支援など“営業の入口”に近い場面の強化に踏み込んでいます。共通するのは、基盤とガバナンスを先に整え、実装を“数で回す”設計です。

出典:パナソニック コネクト プレスリリース
出典:Techplayコラム/動画「楽天流!AI導入の進め方」
出典:MUFG 統合報告書2025(PDF)
出典:SMBCニュースリリース「AI-CEO」

まとめ—営業DX 事例(AI活用)から見える実装のコツ

営業DXは、“時間を返す領域”から始めると定着が早まります。面談の要約と記録、提案書の骨子作成、社内ナレッジ検索など、日々の繰り返し作業にAIを差し込み、まずは可視化しやすいKPIで効果を捕まえる。

次に、パイプラインや成約率といった“売上KPI”を狙うユースケースへ段階的に広げます。データ提供・権限・検証の仕組みは初期から決め、ITと現場が並走する体制で“小さく試して大きく広げる”。国内外の事例が示す通り、単発のツール導入ではなく、業務プロセス全体をエージェント化する設計こそが、成果の持続性を左右します。

カテゴリー:営業・販売

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