Amazon Complete TV とは?実務ガイド—TV出稿を一元管理する新機能の仕組みと使いどころ

Amazon Complete TV とは?実務ガイド—TV出稿を一元管理する新機能の仕組みと使いどころ
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Amazon Complete TVは、Amazon DSP(※広告主が在庫を横断購入できる配信プラットフォーム)の新機能で、Prime Videoや外部のプレミアム配信先まで含めたストリーミングTVの計画・運用・計測を一元管理します。 AIが予算配分を提案し、アップフロント(※年次の放映枠契約)とスキャッター(※期中の突発買付)の消化状況を可視化します。アドレサビリティ(※識別可能な配信機会の割合)やブランドリフト、重複到達などの分析はAmazon Marketing Cloud(AMC)で深掘りできます。 提供はベータから段階展開中で、地域やメニューは国・アカウントによって異なります。

Amazon Complete TV とは(定義・背景・できること)

Amazon Complete TVの概要と位置づけ(※初心者向け注釈つき)

Amazon Complete TVは、Amazon DSP上でストリーミングTVの計画・運用・計測をまとめて扱うための機能群です。広告主はキャンペーンの目的やターゲットを入力し、AIによる配分提案や進捗の自動調整を受け取ります。

ここでいう“DSP”は、複数のメディア在庫を横断して買い付ける仕組みのことで、Webの運用型に慣れていない人でも、テレビの枠とデジタルの指標を同じ画面で見通せるのが利点です。Amazonはこの機能を“ホリスティック(全体最適)なTVバイイング”の起点と位置づけています。

何が新しいのか(AI配分・広い到達・運用自動化)

Complete TVは、Prime Videoとプレミアム配信先を跨いで到達と頻度を最適化します。特徴はAIによるリアルタイムの予算配分と、AmazonのAd Relevance(機械学習)を使った高いアドレサビリティです。

0%/1%の低料率(後述)や、到達の重複・ブランドリフトまで一体で見られる点も、従来の分断されたCTV運用より実装が進んだ部分です。こうした“まとめて設計”は、テレビの買付慣習と運用型の管理を橋渡しします。 

どこで使えるかと提供状況(ベータ/展開時期)

Complete TVはベータ提供から始まり、2025/26放送シーズンにかけて広く展開される計画です。

地域・アカウント・在庫契約によって利用範囲が異なるため、担当営業やアカウントチームに可用性と前提条件(対象在庫、PG契約、API連携の可否)を確認してください。日本国内のPrime Videoや外部配信先の扱いは、市場・在庫の状況に依存します。計画段階で“使える面と買い方”を具体名で棚卸しすると、導入時の齟齬が減ります。 

出典:Amazon Ads「Amazon Ads introduces Complete TV」
出典:Marketing Dive「Amazon shores up stronger CTV position with Complete TV」
出典:Digiday「AI tool built for upfront negotiations」

Amazon Complete TV の主な機能(計画・運用・コスト)

予算配分と在庫管理(Prime Video+外部配信先/UpfrontとScatter)

Complete TVでは、Prime Videoと外部のプレミアム配信先にまたがる“TV予算”を一つの計画で持てます。広告主はアップフロント(年契)とスキャッター(期中枠)の消化を同時管理でき、進捗が遅れていれば配分を自動で見直します。

これは従来、担当者がExcelで突き合わせていた作業を“計画画面内”に取り込む使い方です。AIは到達・頻度のギャップや重複を見て、どのパブリッシャーにウエイトを置くべきかを提案します。

リーチ&フリークエンシー管理(線形TVの洞察も活用)

到達(リーチ)と頻度(フリークエンシー)は、ストリーミング横断で最適化されます。Complete TVは、線形TV(放送)由来のインサイトも取り込み、重複や不足を可視化する前提を提供します。

線形枠そのものの買付は別管理でも、線形を含む“全体の見え方”で意思決定を進められます。期中に番組編成やスポーツの山が来る場合、配分の偏りを早期に検知できるため、指名検索や来訪の“山”を逃しづらくなります。 

手数料と買い方(PG料金・Ads Planner/API連携)

Complete TVは、Amazonの自社面(Prime Video等)のPG手数料が0%、外部プレミアム配信先のPG手数料が1%と案内されています。さらに、Ads Planner(計画画面)だけでなく、API経由で代理店ツールに連携して予算・単価・オーディエンスを流し込めます。

費用面での“摩擦”を下げながら、社内外の既存ワークフローに合わせた導入が可能です。導入時は、PG契約の紐づけと、代理店側のツール対応状況を合わせて確認してください。

出典:Amazon Ads「Amazon Ads introduces Complete TV」
出典:Adweek「Amazon automates big parts of buying TV」
出典:Marketing Dive「CTV position with Complete TV」

Amazon Complete TV の計測・モデル(AMC連携の使いどころ)

AMCでの重複・経路分析(到達の重なりとCVパス)

Complete TVはAmazon Marketing Cloud(AMC)と連携し、パブリッシャー別の到達・重複、トップ・コンバージョンパス(CVまでの接触順)などの分析が可能です。これにより、ラストタッチ(最後の接点)に偏らない読み方ができます。

例えば、Prime Video→外部パブリッシャー→検索の順でCVが多いなら、期中もその順序を意識した配分やクリエイティブの切り替えが有効です。AMC側でブランドリフトの集計を並べ、短期の行動と中期の認知を同じ設計図で評価します。

アドレサビリティとブランドリフトの読み方

Complete TVは最大95%のアドレサビリティ(Amazon社内データに基づく)を掲げています。これは、「関連性の高い露出機会をどれだけ識別・活用できるか」の度合いを指します。

ブランドリフトは、媒体別の到達・重複の情報と併せて読み、重複が多いのに持ち上がらない面があれば、クリエイティブ差し替えや周波数上限の見直しを検討します。端的なCTR依存から一歩進み、“どこで何回見せた結果、どれだけ動いたか”を段階で見ます。 

線形TVの「結果データ」を配分判断にどう使うか

Complete TVは、線形TVの投資も含めた成果の読み合わせを支援します。線形枠の購入そのものは従来の取引でも、線形を含む全投資の“実績読み”を一つのダッシュボードで扱える点が実務的です。

たとえば、線形の大型スポーツ中継で指名検索が跳ねた週は、ストリーミング側の上限頻度やクリエイティブを“追い風前提”で設計できます。期中の“配分替え”の根拠を、横断の実績可視化から引けます。 

出典:Amazon Ads「Amazon Ads introduces Complete TV」

Amazon Complete TV の活用シナリオ(出稿設計の型)

UpfrontとScatterを一体で運用する

年初にUpfront(年契)で押さえた到達を“土台”にし、期中のScatter(突発枠)で不足分を埋めるのが基本形です。Complete TVは、この二つの消化状況を同じ計画で管理し、遅れが出た面や過剰投下の面をAIが示します。

オンオフラインの売上や来店の山谷も見ながら、期中に配分と頻度を小刻みに調整します。人手では追い切れなかった“ズレ”の検知を仕組み化し、月次での焼き直しを減らします。 

既存CTV買付との役割分担(他ツールと併用する前提)

既にCTVを別ツールで運用している場合は、役割分担を先に決めます。たとえば、既存DSPは“特定パブリッシャーの深掘り”、Complete TVは“横断の到達・頻度最適化とUpfront消化管理”とし、重複をAMCで監視します。

PG/PD(プログラマティック・ギャランティード/ディレクト)や、直接契約の整理を最初に実施し、どの在庫をどちらで買うかを明文化すると、期中の取り合いを避けられます。 

少額から始める最小セット(まず何を整えるか)

少額で試す場合でも、①到達・頻度の基準値(週○回など)②ブランド・行動のKPI(想起/指名検索/来訪/CV)③在庫の棚卸し(Prime Videoと外部の想定枠)――この三点を先に合わせます。

AMCで重複到達とトップ経路だけは必ず見る、といった“最低限の分析リスト”を決め、次の四半期でUpfrontとScatterの配分比を見直せる形にします。小さく回しても、翌期の配分判断に耐えるログを残します。 

出典:Adweek「Amazon automates buying TV(Upfront/Scatterに対応)」
出典:Amazon Ads「Amazon Ads introduces Complete TV」

Amazon Complete TV の注意点(法令・品質・地域差)

プライバシーと同意(Cookie/IDの扱いと社内規程)

CTVの計測では、Cookieや端末識別子、ログインIDなどの扱いが論点になります。日本では、個人情報保護委員会(PPC)が「Cookie等は個人関連情報に当たり得る」ことや、他情報と照合すれば個人情報になり得ることを示しています。

企業は取得目的・第三者提供・匿名加工の扱いをガイドラインに沿って明示し、同意範囲内で活用します。Complete TV導入時も、社内規程と同意設計の点検を必ずセットにしてください。

品質・透明性の基準(MRC/IABに合わせる)

ビューアビリティ、不正トラフィック、SSAI(サーバー側差し込み)環境の扱いなど、測定の前提はMRC/IABの基準に合わせると、ベンダーをまたいだ整合が取りやすくなります。

CTVはプレイヤーやOSが多様で、信号の欠落や段差が起きやすい領域です。Complete TVで数字が伸びない場合は、まず測定経路(SSAI/クライアント)と前提の差を点検します。基準に沿った“前提書”を運用手順に組み込み、監査に耐える設計にします。 

日本での前提と確認事項(在庫・提供範囲・審査)

Complete TVはベータ→順次展開の段階です。日本での在庫(Prime Videoの広告在庫や外部配信先)、PG契約の可否、API連携、審査フローはアカウントごとに差が出ます。

導入前に、①利用できる配信先の一覧②PG/PDの契約状況③Ads PlannerまたはAPIの利用可否を書面で確認してください。可用性が確定していない前提でのKPI設計は、期中に手戻りが発生しがちです。 

出典:個人情報保護委員会FAQ「Cookie等は個人関連情報か」
出典:MRC「OTT/CTV & SSAI Digital Video Measurement Guidelines」
出典:Amazon Ads「Amazon Ads introduces Complete TV」

まとめ(Amazon Complete TV とは何かの要点整理)

Amazon Complete TVは、ストリーミングTVの計画・運用・計測を一つのワークフローにまとめる機能です。AIによる配分提案、Upfront/Scatterの同時管理、低料率のPG、AMCによる重複・経路・リフト分析までを同じ設計図で扱えます。

線形TVのインサイトも読み合わせられるため、テレビ×デジタルの“全体最適”に踏み出しやすくなります。導入時は、可用性・測定前提・社内規程の三点をまず固め、期中は重複と順序を見ながら予算を動かしてください。これが、CTV投資を“説明できる成長”に変える近道です。

カテゴリー:マーケティング・広告

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