週休3日制を採用している企業事例を紹介―成果と落とし穴、導入の型まで一気に紹介

週休3日制企業事例の全体像と「3つの型」を押さえる(まずは設計の出発点)
総労働時間維持型(圧縮)——給与据え置きで“ゼロ割振り日”を設ける
フレックスタイム制を活用し、週1日を「勤務時間を割り振らない日(ゼロ割振り日)」として設定し、残りの日に時間を配分する型です。給与を維持しながら勤務日数を減らせるため、制度変更の影響が読みやすいのが特徴です。 国家公務員では、一般職員を対象に拡大する方針が決定され、2025年4月1日から施行される予定です。この考え方は民間にも応用可能で、設計の出発点として参考になります。
労働時間短縮型(賃金維持/一部減)——“時間を減らして成果を落とさない”設計
週の所定労働時間を短縮しつつ、給与は維持または一部調整する型です。この場合は生産性維持の設計が鍵となります。会議の削減、業務標準化、IT活用が不可欠であり、同時に一部職種では追加採用や業務再設計が必要になるケースもあります。 海外の調査では、労働時間を短縮しても売上や生産性を維持できた事例が多数報告されており、運用次第では十分に成果を出せるとされています。
出典:Autonomy「The UK’s four-day week pilot」
シフト・交替制の週休3日——現場は“人員計画と可視化”が勝負
店舗・製造・介護といった交替制職場での導入は、人員計画が最大の論点です。厚生労働省の事例集では、交替表の見直しや残業抑制により、全体残業が減少し、有給取得率も上昇した事例が報告されています。 現場型の制度定着には、シフト表の見える化や運用ルールの明確化が不可欠で、属人的な対応にしない工夫が求められます。
週休3日制企業事例(大企業編)——設計と成果、社内受容の進め方
日本マイクロソフト:全社“金曜休業”の実験で生産性約40%向上
2019年夏に実施した「ワークライフチョイス チャレンジ」では、8月の毎週金曜日を全社一斉に休業日に設定しました。 ポイントとなったのは以下の取り組みです。
会議を原則30分以内に短縮、参加人数も5名までに制限
社内コミュニケーションにTeamsを活用し、意思決定を迅速化
紙資料を極力廃止して印刷コストを削減
その結果、前年同月比で一人当たりの生産性が約40%向上。短期でも、会議効率化やデジタルツール活用が生産性に直結することを証明した好例です。
出典:日本マイクロソフト「ワークライフチョイス チャレンジ2019 夏 効果測定」
ファーストリテイリング(ユニクロ):地域正社員に週休3日、店舗運営と両立
2015年から地域正社員を対象に週休3日制を導入。現場の店舗運営に影響を出さないために、以下の工夫を実施しました。
シフト設計の最適化:週休3日でも店舗の稼働を維持できるよう、曜日ごとの人員配置を再設計
教育・育成プログラム:接客・在庫管理などの店舗オペレーションスキルを短期間で習得できるように標準化
採用のアピール材料:週休3日制を打ち出し、多様な働き方を希望する人材を引きつける
これにより、店舗運営の品質を維持しながら、人材確保や定着につなげることができました。
パナソニック:選択的週休3日制の方針と“賃金・役割”の議論点
パナソニックは選択的週休3日制を導入する方針を表明。実際の制度設計において、次のような論点が重視されました。
賃金水準の調整:労働時間短縮と給与維持のバランスをどう取るか
評価基準の見直し:成果主義との整合をとり、週休3日を選択した社員が不利にならないように設計
キャリアと昇格要件:役職ごとの責任範囲を再定義し、昇進・昇格要件を柔軟化
特に「賃金・評価・キャリア」を早期に整理することで、社員が安心して制度を選択できる環境を整えることが課題とされました。
出典:ITmediaビジネス「パナソニック『週休3日』の論点」
週休3日制企業事例(公的機関・自治体の最新)
国家公務員:ゼロ割振り日の対象拡大(施行2025年4月1日)
人事院は、フレックスタイム制を活用して週1日の「勤務時間を割り振らない日(ゼロ割振り日)」を設定できる制度を、2025年4月1日から一般職員にも拡大します。 工夫のポイント
育児・介護限定だった対象を一般職員まで広げ、柔軟な働き方を制度化
他日で労働時間を調整する仕組みで、給与水準を維持しつつ実現
民間企業でも応用可能な“制度設計の雛形”として注目
東京都庁:2025年度から選択的週休3日を導入方針
小池知事は2024年12月の所信表明で、都庁職員に選択的週休3日制を導入する方針を表明しました。 工夫のポイント
子育て・介護と両立できるよう、フレックスタイム制と組み合わせる構想
部局ごとの業務特性に応じて「どの職種で導入可能か」を精査する仕組み
試験導入を段階的に行い、実績を踏まえて対象拡大
出典:毎日新聞「都が週休3日制導入へ(2024/12/4)」
厚労省の“無料コンサル”事例集:導入プロセスと論点のチェックリスト
厚労省は「選択的週休3日制無料コンサルティング」の事例を公開。企業が導入検討する際の“実務の型”として使えます。 工夫のポイント
導入前に「労働時間制度」「評価・報酬」「副業・兼業の可否」を整理するチェックリストを提供
コンサルタントがシフト設計や残業削減シナリオを提示し、現場負担を見える化
導入後の効果検証(残業時間・定着率・有給取得率)までサポート
出典:厚生労働省「働き方・休み方改革 取組事例集(2025年3月発行)」
週休3日制企業事例(医療・保育・福祉・現場の実装)
保育現場の報告:残業削減と有休取得率の改善
保育事業のケースでは、選択的週休3日制の導入で残業が減少し、有休取得率も改善しました。 工夫のポイント
シフト表を見直し、週休3日でも無理なく運営できるよう人員配置を再調整
定時退勤を基本とし、残業申請ルールを徹底
有休取得を“シフトに組み込む”方式を採用し、計画的に休めるよう改善
結果、月平均残業時間は9時間→6時間に減少、有休取得率も82%→95%へ上昇。
障がい支援施設の報告:年間休日の大幅増とスキル投資の後押し
ある障がい者支援施設では、週休3日制により年間休日が122日→173日に拡大。 工夫のポイント
副業や資格取得を推進し、“休みを活用する文化”を制度と一体化
小規模組織ならではの工夫として、スタッフの「複数役割化」で人員不足を補う
定例会議や事務作業を標準化して、限られた時間で効率的に運営
結果として、採用・定着にプラス効果が出ただけでなく、社員のスキルアップ投資にもつながった。
自治体・病院の先行例:人材確保と定着の効果、運用の工夫
全国知事会の事例集では、医療・福祉分野での先行導入が紹介されています。 工夫のポイント
医師・看護師不足の現場で「人材確保・定着」を目的に導入
給与維持型と時間短縮型を職種ごとに選択し、柔軟に設計
DXツール(電子カルテ・勤怠管理システム)を導入し、シフト調整を効率化
導入効果として、人材流出の抑制と新規採用への好影響が確認されました。
週休3日制企業事例(海外編)――“短時間×成果維持”の実証から学ぶ
英国の大規模パイロット:継続率90%超、離職やストレスの低下
2022年に英国で実施された世界最大規模の週4日勤務パイロット(61社・約2,900人)は、参加企業の9割超が継続を選択しました。 工夫のポイント
導入前に「2か月の準備フェーズ」を設け、会議削減やKPI設計を徹底
会議の時間制限(30分以内)、会議日を限定するルールを導入
生産性を測るKPIを事前設定(売上、顧客満足度、欠勤率)し、導入後の効果を数値で検証
結果として、売上は維持、離職率は改善、ストレスや疲労感は大幅に低下しました。
出典:Autonomy「The UK’s four-day week pilot(最終報告)」
アイスランド:公共部門で35〜36時間へ短縮、給与維持で全国へ拡大
2015〜2019年に行われた公共部門での短時間化トライアルでは、給与を維持したまま週労働時間を35〜36時間に短縮しました。 工夫のポイント
“週休増加”だけでなく、1日の勤務時間短縮など柔軟に設計
公務員労組と協力して「成果の見える業務改善」を推進
生産性指標(処理件数、患者数、利用者満足度)を導入し、短時間でも成果が出ていることを証明
結果、ストレス低下と生産性維持が確認され、その後の労使交渉を通じて全国的に拡大しました。
出典:Alda / Autonomy「Iceland’s Journey to a Shorter Working Week」
「金曜を軽くする」潮流:会議削減で週の総力を底上げ
北米では完全休業ではなく、金曜を「軽労働日」と位置づける運用が広がっています。 工夫のポイント
金曜を「会議ゼロデー」と定め、集中作業や学習に充てる
チームごとに“金曜に何をするか”をルール化し、業務の見直しを推進
週の後半に余力を残すことで、週全体のパフォーマンスを安定化
結果として、従業員の疲労感軽減、短期休暇取得率の上昇、集中作業の効率化につながっています。
出典:The Wall Street Journal「金曜の働き方が変化」https://jp.wsj.com/articles/were-working-less-on-fridays-than-we-used-to-and-thats-ok-450eec83
まとめ
週休3日制の企業事例から見えてくるのは、制度そのものよりも「運用設計の巧拙」が成否を分けるという点です。
大企業(マイクロソフト・ユニクロ・パナソニック) は「短期実験→成果数値化→本格導入」と、段階を踏んで展開。会議削減や意思決定迅速化といった“目に見える改善”を成果として示しました。
自治体・公的機関(国家公務員・東京都庁) は「制度の枠組みをどう整えるか」に注力。対象範囲を拡大し、評価・報酬との整合をとる工夫が導入の要でした。
現場業態(保育・福祉・病院) では「シフト調整・人員配置・DX活用」で運用を安定させ、残業削減や定着率改善を実現しました。
海外事例(英国・アイスランド・北米) では「準備期間の徹底」「労使協力」「部分導入から始める」ことが成功要因となり、継続率や労働生産性へのプラス効果を裏付けました。
つまり、導入にあたっては「型を選ぶ(維持型・短縮型・シフト型)」→「会議・業務設計を変える」→「効果をKPIで測る」→「短いサイクルで改善する」という流れを確立することが不可欠です。
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