LinkedIn広告をB2Bで活かす方法とは?セグメント設計の考え方と実装手順

LinkedIn広告をB2Bで活かす方法とは?セグメント設計の考え方と実装手順
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LinkedIn 広告のB2Bセグメント設計は、単なる広告配信の設定作業ではなく、営業リストを作るのと同じくらい重要で、誰に届けるのかを正確に決めるプロセスです。職種や役職、企業規模、業種といったプロフェッショナル属性を組み合わせることで、理想顧客像(ICP)に近いセグメントを設計できます。 また、マッチドオーディエンスやリード獲得フォームといったLinkedIn特有の機能を活用することで、配信量を確保しながら精度も高められます。本稿では、LinkedIn広告におけるB2Bセグメント設計を、基本的な軸、実際の実装ステップ、運用改善の工夫、具体的な実例まで、初心者でも現場で実践できるレベルで一気通貫に解説します。

LinkedIn広告×B2Bセグメント設計の基本

なぜB2BでLinkedIn広告なのか(プロフェッショナルデータの強み)

B2B広告においては、意思決定権限や担当領域が明確に把握できる媒体ほど、無駄な配信を減らせます。LinkedInは、会員が自分で更新する職歴や所属情報に基づいて広告を出せるため、職種や役職、企業規模といった「仕事そのものに直結する属性」でターゲティングできます。

たとえば「製造業のIT部長以上」や「従業員500名以上の人事マネージャー」といった、営業部門が実際に狙うターゲット像をそのまま再現できます。最初の一歩としては、既存顧客に共通する条件を整理し、それがLinkedInの項目で再現可能かを確認するのが近道です。こうすることで、単なるアクセス数ではなく、商談につながる質の高い流入を得られます。

セグメント設計が成果を左右する仕組み(精度×ボリューム)

B2B広告においては、クリエイティブの内容よりも「セグメント設計の正確さ」が成果に直結します。条件を広げすぎればCPA(獲得単価)が高騰し、逆に狭めすぎれば配信自体が止まって学習が進みません。

このバランスを取る鍵は「精度とボリュームのトレードオフ」であり、まずは広めの条件で配信を開始し、実績を見ながら不要な条件を除外していくのが安全です。また、営業部門とすり合わせて「広告で集めたい人物像」を明確に言語化しておくと、配信ボリュームの調整もスムーズになります。結果的に、商談化率が向上し、安定的に成果を出せる運用につながります。

他媒体との役割分担(検索/嗜好/職務データ)

Google広告は「何を探しているか」という顕在的なニーズに強く、MetaなどのSNS広告は「興味や関心」といった潜在的な動機に強いです。LinkedInはその中間に位置し、職務・役職・企業属性といったビジネスの属性から「決裁に関わる層」を抽出できます。

実務では、Googleで顕在需要を取り込みつつ、LinkedInで決裁プロセスに関わる複数の人材に接触し続けるという組み合わせが効果的です。こうした役割分担を明確にすると、広告費の重複投下や機会損失を防ぎ、投資効率を高められます。

出典:LinkedIn Marketing Solutions「Ad Targeting」
出典:LinkedIn Marketing Solutions「Marketing Solutions」

B2Bセグメント設計の軸(会社/個人/行動・関心/マッチド)

会社属性:業種・企業規模・所在地で“当て先”を外さない

B2B広告で最初に考えるべきは「どの会社に配信するか」です。業種(Company Industry)、規模(Company Size)、所在地(Location)の3つを設定するだけでも対象の質は大きく変わります。例えば「関東の製造業×従業員500名以上」といった条件は、営業ターゲットとほぼ重なります。

さらにABM(アカウントベースドマーケティング)型の運用では、特定の会社名を指定(Company Names)することも可能です。対象となる社名リストが広い場合には、マッチドオーディエンス機能を使って一括で取り込むと効率的です。

個人属性:職種・役職・職務年数・スキルで“中の人”を特定する

同じ会社でも、意思決定に関わるのはごく一部の人材です。LinkedInでは職種(Job Function)、役職(Seniority)、職務名(Job Title)、スキル(Skills)といった条件を組み合わせることで、その「中の人」を的確に抽出できます。

たとえば「IT部門のマネージャー以上」「クラウドやセキュリティのスキルを持つ人材」といったように設定すれば、意思決定者層を狙い撃ちできます。なお、役職名は国や企業文化によって表記が異なるため、Job Function+Seniorityを基本に、Job Titleを補助的に活用すると安定した配信が可能です。

行動・関心とマッチド:閲覧・訪問・保有リストの併用で精度を底上げ

LinkedIn内での関心データ(グループ参加やフォロー)に加え、自社サイト訪問者のリターゲティング、顧客リストやMAツールとの連携によるオーディエンス活用などを組み合わせると、商談化の精度が格段に高まります。

たとえば新規開拓では「広めの属性×サイト訪問者」、深耕営業では「属性×既存顧客リスト」といった組み合わせが有効です。さらに配信量が不足する場合は、LinkedInの「オーディエンス拡張」機能をテストしてボリュームを補強できます。

出典:LinkedIn Help「Targeting options for LinkedIn Ads」
出典:LinkedIn Help「Professional demographics for your LinkedIn Ads」
出典:LinkedIn Help「Matched Audiences」
出典:LinkedIn Help「Use audience expansion」

実装ステップ:ICP定義→粒度調整→除外と準拠

ICPの翻訳:“顧客像”をLinkedInの項目に落とし込む

B2BでLinkedIn 広告のセグメント設計を行う際には、まず「理想的な顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)」を具体的に定義し、それをLinkedInのターゲティング項目に翻訳することが出発点となります。既存の受注データから、業種・企業規模・部門・役職の共通点を抽出し、「この顧客像はLinkedInのどの項目で再現できるか」を確認します。

たとえば「中堅から大企業の製造業」「IT部門のマネージャー以上」「意思決定権を持つ人材」といった条件を営業現場の言葉で整理し、それをLinkedInのCompany、Job Function、Seniorityなどの項目に落とし込むイメージです。初期の配信は広めに設定し、配信データを見ながら「無関係な会社や役職」を除外リストに積み上げる運用が現実的です。さらに、共同開催イベントやパートナー企業経由の招待施策がある場合には、あらかじめ社名リストをマッチドオーディエンスに取り込み、ABM的な精度で立ち上げることも効果的です。この「営業の言葉を媒体項目に翻訳する精度」が、最終的に歩留まりの良し悪しを大きく左右します。

粒度調整:配信が出る幅を確保しつつ、徐々に締める

セグメントの条件を最初から狭く設定しすぎると、配信量が不足して学習が進まず、最適化が働きません。そのため、最初は「会社属性(業種・規模・地域)」+「職種(Job Function)」+「役職(Seniority)」といった基本軸で広めに設定し、そこにタイトルやスキルを追加する順序が安定します。

配信量が不足する場合は、業種や役職の近接領域を広げたり、地域を隣接エリアまで含めたり、LinkedInの「オーディエンス拡張」を活用して母数を補強します。逆に、無駄クリックや不必要な流入が増えてCPAが悪化する場合には、除外条件の追加やスキル指定で精度を戻します。実務的には「精度と配信量の振り子」を意識して、週次で実績を見ながら条件を動かすイメージです。

除外と法規制への配慮:配信の“しない設計”と最新ルール

LinkedIn広告のB2Bセグメント設計では「誰に配信するか」と同じくらい「誰に配信しないか」の設計が重要です。学生や個人事業主、採用担当者など、対象外のセグメントをあらかじめ除外することでCPAの悪化を防げます。さらに、グローバル配信を行う場合には地域や法域ごとの広告規制も考慮が必要です。

例えばEUでは、DSA(デジタルサービス法)対応の一環でLinkedInが一部のターゲティング機能を制限し、グループ会員情報の活用に制約を設けた事例があります。つまり、同じLinkedIn広告でも、地域ごとに使える条件が違う場合があるのです。したがって、最新のヘルプドキュメントと実際の管理画面での挙動確認を必ずセットで行うことが安全な運用につながります。

出典:LinkedIn Help「Best practices for LinkedIn Ads audience targeting」
出典:LinkedIn Help「Use audience expansion」
出典:Reuters「LinkedIn disables tool for targeted ads to comply with EU tech rules」

運用と評価:KPI設計/クリエイティブ整合/テスト計画

KPI体系:登録・商談・収益まで“一連”で測る

B2B広告の評価において、クリック率(CTR)や表示回数だけを追っても成果には直結しません。LinkedIn広告のB2Bセグメント設計を評価する際は、リード獲得率(登録率)、商談化率(SQL化率)、受注率、平均案件単価、投資回収期間(Payback Period)といった営業ファネル全体と連動したKPI設計が欠かせません。

媒体内の指標に偏ってしまうと、実際の収益への影響を見誤る危険があります。そのため、広告プラットフォームと自社のCRMを接続し、セグメントごと・チャネルごと・クリエイティブごとに歩留まりを比較することが重要です。これにより、予算をどこに振れば収益効率が高いかを客観的に判断できるようになります。

クリエイティブの整合:職務課題に合わせて訴求を変える

LinkedIn広告の強みは、セグメント設計とクリエイティブの整合性を取れる点にあります。例えばIT部門の管理職を狙う場合には「運用負荷削減」や「セキュリティ強化」「TCO削減」などの課題を訴求すると効果的です。経営層を対象にするなら「ROI改善」「リスク低減」「新規事業との親和性」といった経営目線のメッセージが刺さります。

本文やランディングページはターゲットの職務課題に直結させ、具体的な導入効果や事例を数字とともに示すことで、信頼度が高まり、商談化率が向上します。また、CTA(コールトゥアクション)は「デモ予約」「相談申込」「比較表ダウンロード」など複数用意し、どのCTAが最短で商談に結びつくかをテストで見極めることが有効です。

テスト計画:対象・訴求・フォーマットの順でPDCA

広告の最適化は、対象(セグメント条件)、訴求(クリエイティブ内容)、フォーマット(静止画・動画・メッセージ広告・リードフォーム)の順にテストしていくと因果関係が明確になります。

まず「誰に配信するか」を検証し、その次に「どんなメッセージが刺さるか」、最後に「どの配信フォーマットが効率的か」を見極めます。各テストは必ず1要素ずつ変えて比較し、学習に必要な期間を確保します。

また、大型イベントや季節要因など外的要因を記録しておくと、再現性のある結果を残しやすくなります。勝ちパターンが見えたら、それをテンプレート化して他のキャンペーンや別商材にも展開し、効率的に運用をスケールさせます。

出典:LinkedIn Help「Best practices for LinkedIn Ads audience targeting」
出典:LinkedIn Marketing Solutions「Marketing Solutions」

実装例:LinkedIn 広告/B2Bセグメント設計のパターン

ITソリューション(製造×情報シス部門)— ABM寄りの精度設計

このケースでは、対象企業を「製造業」「従業員500名以上」「関東圏」と定義し、会社属性で基盤を固めます。そのうえで、個人属性として「Job Function: IT」「Seniority: Manager以上」を掛け合わせます。

さらに、既に接点を持つ企業の社名リストをマッチドオーディエンスに取り込み、アカウントベースドマーケティング(ABM)的に深掘りします。フォームは離脱率を抑えるためにLinkedInのリード獲得フォーム(Lead Gen Forms)を使用し、CTAは「現場の工数削減に関する30分無料相談」など、部門の課題に直結する表現を置くと効果的です。もし配信量が足りなければ、近接業種(例:電機・自動車)や隣接地域を追加してボリュームを確保します。

SaaS(マーケ部門向け)— 広めに始めて高意図シグナルで絞る

SaaSをマーケ部門へ届けたい場合、会社属性は「情報サービス業」「従業員100〜1000名」「全国展開」と設定します。個人属性は「Job Function: Marketing」「Seniority: Manager/Director」が基本軸です。

初期段階ではJob Titleの指定を緩めにして配信量を確保し、実績を見ながら条件を絞ります。その後、サイト訪問者や資料ダウンロード、ウェビナー参加者といった高意図シグナルをマッチドオーディエンスで重ね、商談化の確度を高めます。

クリエイティブでは「既存ツールとの連携」「導入までの期間」「運用負荷」など、導入にあたっての不安を先回りして解消する訴求を入れると効果的です。フォームは事前入力済みのリードフォームを活用し、営業カレンダーと連携した予約CTAも併記すると歩留まりが向上します。

コンサル・BPO(経営層向け)— 役員セグメント×コンテンツ誘導で関係構築

コンサルやBPO向けの場合、会社属性は「金融・保険業」や「大規模小売業」などを選び、個人属性は「Seniority: VP以上」「Job Function: Strategy/Operations」を主軸に設定します。Job Titleは広めに取り、対象者が漏れないように配慮します。

この場合は商談直結の獲得よりも、まずはレポートのダウンロードやエグゼクティブ向けイベント招待といった“関係構築”を優先します。その後、ニュースレターやフォローアップで継続的に接触を重ね、役職別のABMプレイブックを活用してナーチャリングを分岐させます。配信量が不足する場合はオーディエンス拡張を限定的に活用し、役員向けに特化した動画・記事・フォームを組み合わせることで、継続的な閲覧体験を提供します。

出典:LinkedIn Marketing Solutions「Lead Gen Forms」
出典:LinkedIn Help「Matched Audiences」
出典:LinkedIn Help「Use audience expansion」

まとめ:LinkedIn 広告のB2Bセグメント設計を“精度×量”で最適化する

B2BにおけるLinkedIn広告は、会社属性(業種・規模・地域)と個人属性(職種・役職)を骨格に設計し、それに行動シグナルやマッチドオーディエンスを組み合わせることで、精度を高めながら配信量を確保することができます。

こうした「精度と量のバランス」を常に意識し、商談化につながる最短経路を見つける運用が成功の鍵です。実装の流れとしては、まずICPをLinkedIn項目に翻訳し、配信条件の粒度を調整しながら除外や法規制への準拠を徹底します。

そのうえで、KPIとクリエイティブを整合させ、テストを継続して最適化を進めます。さらに、地域ごとの規制や機能の変更を定期的にチェックし、勝ちパターンをテンプレート化して展開すれば、限られた予算でも「案件化できるリーチ」を安定的に増やすことが可能です。結果として、LinkedIn広告はB2Bマーケティングにおいて、営業活動と広告配信を結びつける“強力な基盤”として機能します。

カテゴリー:マーケティング・広告

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