【労務リスクゼロへ】フレックスタイム制度の最適設計ガイドー法改正対応、勤怠・賃金処理の「実務の型」を解説!

【労務リスクゼロへ】フレックスタイム制度の最適設計ガイドー法改正対応、勤怠・賃金処理の「実務の型」を解説!
フレックスタイム 制度 設計を、初めて担当する人でも迷わず実装できるように、法的な基礎から勤怠や賃金の運用方法まで整理します。フレックスタイム制は、清算期間(最長3か月)の中で労働時間の総枠を決め、その範囲で従業員が日ごとの始業・終業を選べる制度です。
時間外の判定は「清算期間で総枠を超えたかどうか」で行うのが基本であり、36協定・就業規則・勤怠管理の3つを同時に整えることが運用の要となります。この記事では、法的枠組み、制度設計の要素、賃金・残業処理、モデル別の運用例、よくある落とし穴と監査対応までを、実務に直結する形で解説します。
フレックスタイム制度の基本(法的枠組みと用語)
フレックスタイム制度とは:何を決めれば自由に働けるのか
フレックスタイム制度は、一定の清算期間(最長3か月)をあらかじめ設定し、その期間における総労働時間(総枠)を定めたうえで、各日の始業・終業時刻を従業員が自ら決められる仕組みです。2019年の働き方改革で、従来1か月だった清算期間の上限が3か月に延び、月をまたいだ柔軟な調整が可能になりました。制度の定義や導入にあたっての留意点は、厚生労働省の公式リーフレットや都道府県労働局の解説資料に整理されています。特に、清算期間に関する法的根拠は労働基準法第32条の3に定められており、導入時には一次情報を必ず確認することが重要です。
また、コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)とフレキシブルタイム(労働者が自由に選べる時間帯)を設けるかどうかは任意です。業務特性や部門ごとの働き方に合わせて柔軟に設計できます。制度導入の最初のステップは「対象範囲を誰にするか」「清算期間を何か月にするか」「総労働時間の算定方法」「コアタイムを設けるか否か」の4点を決めることです。これらが決まれば、その後の就業規則や労使協定、勤怠システム設定へとスムーズに落とし込むことができます。
清算期間と総労働時間:週40時間を“平均”で守る考え方
フレックスタイム制度における時間外労働の判定は、原則として「清算期間全体の総枠を超過したかどうか」で判断します。総枠の算出は「清算期間の暦日数÷7×40時間」という公式が基本で、これに所定休日や所定労働日数を加えた社内ルールを組み合わせることも一般的です。清算期間を1か月を超えて設定する場合は、労使協定の締結と労基署への届出が必要であるため、制度設計の初期段階で必ず確認しておく必要があります。
清算期間中に週平均40時間を超えないことが大前提です。つまり、日によっては8時間を超えて働いても、清算期間全体で総枠内に収まれば時間外労働にはなりません(ただし、深夜労働や休日労働に関しては別途割増賃金が発生します)。この「日単位でなく期間単位で見る」という考え方がフレックス導入の核心であり、評価者や経理担当者、現場管理職まで全員が理解を共有しておくと、制度運用における混乱を大幅に減らすことができます。
コアタイム・フレキシブルタイム・適用除外の整理
コアタイムは「会議や顧客対応をそろえたい時間帯」に限定して設けると無駄がありません。一方、フレキシブルタイムは始業・終業の幅を大きく取ると、従業員の利便性が増します。また、制度の適用除外に関しては、シフト勤務が必須となる受付業務や製造ラインなどは対象外とするのが一般的です。この場合は就業規則と労使協定に「適用除外者とその理由」を明記し、例外運用が属人的な判断に委ねられないようにする必要があります。
厚生労働省や労働局が公開している協定例やリーフレットには、コアタイムやフレキシブルタイムの書き方例が掲載されています。これらを“型”として流用すれば、制度設計の段階で大きな手戻りを防ぐことができます。
制度設計の要素(就業規則・労使協定・勤怠の三点セット)
労使協定:対象・清算期間・総枠・時間帯を文書化する
フレックスタイム 制度 設計の導入には、労働基準法第32条の3に基づく労使協定の締結が不可欠です。この協定には、以下の要素を必ず盛り込みます。
適用対象者の範囲
清算期間(最長3か月)
清算期間中の総労働時間
コアタイムとフレキシブルタイムの設定
標準となる1日の労働時間
超過・不足時間の扱い方
協定の有効期間
特に、清算期間を1か月を超えて設定する場合には、労基署への届出が必要になります。このため、協定書には届出のフローや管理責任者を明記し、更新や改定忘れが起こらないように仕組みを整えることが大切です。
さらに、時間超過や不足の扱いは最もトラブルが生じやすい部分です。超過分は時間外労働として割増賃金の対象となり、不足分は欠勤控除にするのか、次期に繰り越すのかをルール化しなければなりません。繰越を認める場合も「法定労働時間の範囲内に限る」といった条件を外さないようにし、文言は労働局の参考様式に沿うと安全です。
就業規則:休暇や遅刻・早退を含め“運用まで落とし込む”
就業規則には、フレックスタイム制の適用対象者、始業・終業の決定方法、遅刻・早退の扱い、年次有給休暇の取得ルール(時間単位年休を含む)、勤怠申告の締切や修正手順、清算期間末の超過・不足の処理方法、コアタイム中の中抜け可否といった詳細を記載します。
特に、時間単位年休は労使協定を結ぶことで「年間5日分を上限に1時間単位で付与」できる制度です。フレックスと併用する場合には、その取得単位や対象者を明記しておかないと、現場で混乱を招きます。
また、評価制度との関係も明確にしておく必要があります。フレックスは「出社時間の自由化」であって「評価基準の自由化」ではありません。業務開始・終了・会議参加・顧客対応などの期待行動は職務定義書に落とし込み、本人と上長が合意するテンプレートを設けておくことで、評価の透明性が保たれます。さらに、期中には週次・月次で総枠の見通しを確認し、清算期間末に偏りが出ないように早めに調整します。
勤怠と36協定:二重管理でリスクを抑える
勤怠管理システムには最低限、次の機能が必要です。
清算期間の設定
総労働時間(所定時間)の自動算出
深夜・休日・法定外労働の割増計算
36協定の上限(45時間/月、360時間/年、特別条項の条件など)を監視する機能
週40時間超の警告
フレックスタイム制でも、時間外や休日労働については36協定が必要であり、法改正により「複数月平均80時間以内」「単月100時間未満」などの規制が追加されています。したがって、フレックスによる「清算期間ベースの総枠管理」と、36協定による「時間外労働の上限制御」を“二階建て”で運用することが欠かせません。
労働時間の把握は「始業・終業時刻の客観的な記録」が原則です。ICカード、パソコンのログ、タイムレコーダなどで記録を残し、自己申告は例外扱いにとどめるべきです。厚労省のガイドラインにも、事業場外みなし労働制のケースを含め「始終業の確認は必須」と明記されており、フレックス制度でも同じ基準が適用されます。
賃金・残業・深夜・休日の扱い(計算と注意点)
時間外労働の判定:清算期間ベースでの考え方
フレックスタイム 制度 設計における時間外労働の判定は、清算期間が終わった段階で「実際の総労働時間」と「法定労働時間の総枠」とを比較して行います。日ごとや週ごとに8時間・40時間を超えた場合でも、清算期間全体で見たときに総枠内で収まっていれば法定外残業にはなりません。これが通常勤務との大きな違いであり、フレックス制度特有の考え方です。
ただし、清算期間が終わるまで残業の有無が確定しないため、期中で「超過しそうな従業員」を早めに把握し、調整する仕組みが重要です。勤怠システムで見込み超過をアラート表示したり、上長が週次で労働時間を確認する運用を入れると、清算期間末にまとめて残業代が膨らむ事故を防げます。厚労省や各労働局のパンフレットには、清算期間ベースの集計例が図解されているので、それを社内教育用に転用すると理解が進みやすくなります。
深夜・休日労働の扱い:フレックスでも“別勘定”
一方で、深夜労働(22時〜翌5時)や休日労働に関しては、清算期間にかかわらず、その都度割増賃金が発生します。例えば、フレックスで日中は短く働き、夜間に仕事をしても、22時以降の時間は自動的に25%以上の割増対象となります。また、所定休日や法定休日に勤務した場合も同様に休日割増(35%以上)が必要です。
ここでよく起こる誤解は「清算期間内に総枠で収まっているから割増は不要」という誤りです。深夜・休日の割増はあくまで“別勘定”であり、清算期間の枠内であっても必ず支払わなければなりません。勤怠システム上も「通常残業」と「深夜・休日割増」を二重でチェックできるように設定する必要があります。
年休・遅刻早退・不足時間の取り扱い
年次有給休暇は原則として日単位で取得しますが、労使協定を結べば「年間5日分を上限に1時間単位」で付与することも可能です。フレックスタイム制と併用する場合は、時間単位年休の単位をフレキシブルタイムの最小単位に合わせて設計すると、現場での運用がスムーズになります。
不足時間については「欠勤控除」とするか「次期への繰越」とするかを制度として明確にしておく必要があります。繰越を認める場合でも「法定労働時間の範囲に収めること」「繰越できる上限時間を設けること」などの条件を必ず規程や協定に書き込みます。これを曖昧にすると、欠勤扱いを巡って従業員とのトラブルになりやすいため注意が必要です。
モデル別運用設計(コアあり/なし・部署差・短時間勤務の併用)
コアタイムありフレックス:顧客接点の多い部署向け
顧客対応や部門横断の会議が多い部署では、コアタイムを短めに設定するのが現実的です。例えば「10:00〜15:00」をコアタイムとし、その前後に広めのフレキシブルタイム(7:00〜10:00、15:00〜20:00)を設ける形です。これにより、従業員は自分のライフスタイルに合わせて出退勤を調整できる一方で、必要な時間帯にはチーム全員が揃うため、業務効率を維持できます。
制度導入時は、まずは1か月清算期間でスタートし、運用が安定してきた段階で3か月清算に拡張するのが安全です。また、勤怠規則では「コアタイム中に昼休憩を挟むのか」「中抜けを認めるのか」など細かなルールも明記する必要があります。
コアタイムなしフレックス:開発・企画など“集中型業務”向け
一方で、研究開発や企画業務のように個人の集中力や裁量が重視される業務では、コアタイムなしのフレックス制度が適しています。従業員は自分のペースで働ける自由度が高い反面、コミュニケーションの分断や深夜労働の増加といった課題が発生しやすいため、ガイドラインの整備が欠かせません。
例えば「打ち合わせ可能時間帯(11:00〜16:00)」を社内ルールとして定める、深夜時間帯に業務をする場合は「上長の承認を必須とする」などの運用を組み込みます。これにより、自由度を保ちつつ健康やコスト管理のリスクを軽減できます。
短時間勤務制度との併用:育児・介護への対応
短時間正社員制度や育児・介護支援制度と組み合わせてフレックスを設計する場合は、まず所定労働時間自体を短縮し、その上で清算期間の総枠を計算します。例えば「1日6時間×清算期間の所定労働日数」という形です。
また、コアタイムを短めにする、昼休憩をまたがない設定にするなど、家庭の事情に合わせた柔軟設計が求められます。対象者や運用手続きを就業規則や労使協定に明文化し、人事の裁量判断に頼らない仕組みをつくることがポイントです。
評価面では「働ける総時間が異なる」ことを前提に、期待役割を文章で定義しておく必要があります。さらに「保育園送迎のために会議はこの時間帯に設定する」といった実務的な配慮も、制度とセットで決めておくと現場の摩擦を減らせます。
失敗しやすいポイントと監査対応(労基署の視点で整える)
総労働時間の見積りミス:法定総枠と所定枠を混同しない
フレックスタイム 制度 設計で最も多い誤りの一つが「清算期間の総労働時間」の見積りを間違えることです。清算期間の総枠は「暦日数 ÷ 7 × 40時間」で計算する 法定労働時間の総枠 が基準です。これを社内カレンダーや所定休日を基準とした「所定総枠」と混同すると、残業時間の過小評価や過大評価が発生し、監査で指摘されやすくなります。
正しい整理方法は「法定総枠で時間外労働の最低限を判定し、所定総枠は賃金計算やシフト管理の便宜に使う」ことです。厚労省のリーフレットや労働局パンフレットには、図解での説明があるため、自社用にアレンジして社内教育資料にしておくと便利です。
また「フレックスタイム制」と「みなし労働時間制(事業場外・裁量労働制)」を混同するのも典型的なつまずきです。フレックスは「実際に働いた時間の合算」で管理する制度であり、「みなし」で労働時間をカウントする仕組みではありません。就業規則や雇用契約書に明記する用語は正確に区別し、勤怠システム上の表記も統一しましょう。
36協定の上限規制:フレックスでも“別建て”で効く
フレックス制は清算期間内での合算判定が基本ですが、36協定で定められた時間外労働の上限規制(45時間/月、360時間/年、複数月平均80時間以内、月100時間未満など)は別建てで適用されます。つまり「フレックスの総枠」と「36協定の上限規制」は全く別の基準として監視しなければなりません。
そのため、勤怠・給与・人事の各部門が同じダッシュボードで「総枠の進捗」と「36協定の上限」を二重で監視できる仕組みを用意するのが現実的です。厚労省が公開している「時間外労働の上限規制に関する解説資料」は、監査や是正勧告の対応資料としても有用です。
さらに、特別条項を活用する場合は「年6か月まで」などの条件があるため、協定本文・別紙の管理を厳格に行い、過半数代表者の選出や労基署への届出手続きを漏れなく運用することが必要です。
労働時間の把握・健康確保:始終業の客観記録を徹底
労働基準監督署が重視するのは「始業・終業の客観的な記録」です。ガイドラインでは「客観的な方法での記録が原則、自己申告は例外」と明記されています。具体的には、PCログ、ICカードによる入退室記録、Web打刻など複数のデータを突合できる仕組みを備えることが求められます。
また、長時間労働者に対しては医師による面接指導が義務付けられており、健康確保措置の対象者抽出を勤怠システム上で自動化しておくと運用がスムーズです。
監査対応では「制度(就業規則・労使協定)」「運用(勤怠・給与の運用フロー)」「実績(労働時間ログ・賃金台帳)」の突合が基本です。あらかじめ自己点検票を用いて棚卸ししておくことで、是正勧告を受ける前にリスクを発見できます。
まとめ:フレックスタイム 制度 設計の勘所は“法の骨格×運用の型”
フレックスタイム制度は「清算期間内で総枠を守る」というシンプルな仕組みですが、実務で回すためには 法令・就業規則・勤怠システム を三点セットで設計することが欠かせません。
法令の理解:清算期間の枠は法定労働時間(暦日÷7×40h)で判定し、36協定の上限規制は別建てで管理する。
制度設計:就業規則・労使協定・勤怠システムを同時に整備し、超過・不足・深夜・休日の扱いを文章で固定する。
運用の工夫:コアタイム有無は部署特性で選び、短時間勤務や年休制度との併用を前提に組み込む。勤怠システムでは“二階建て集計”を標準にして、見込み超過を早めに検知する。
監査対応:客観的な勤怠記録を必ず残し、自己申告に依存しない仕組みを整える。制度・運用・実績を突合できる体制を整えておく。
制度設計を紙面上のルールで終わらせず、日常の勤怠・会議・評価の仕組みに組み込むことで、現場で回るフレックス制度になります。まずは1か月清算で小さく試し、運用を磨きながら3か月清算や部署別設計に広げていくのが、失敗を防ぐ最短ルートです。
出典:厚生労働省 「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
出典:e-Gov法令検索 「労働基準法(第32条の3)」
出典:東京労働局 「フレックスタイム制(解説)」
出典:愛知労働局 「労使協定(フレックスタイム制)参考例」
出典:滋賀労働局 「導入の手引き(様式集)」
出典:厚生労働省 「時間外労働の上限規制(解説)」
出典:厚生労働省 「働き方改革ハンドブック」
出典:厚生労働省 「労働時間の適正な把握ガイドライン(PDF)」
出典:厚生労働省 「時間単位年休Q&A」
出典:大阪労働局 「“お悩み解決”ハンドブック(上限規制の要点)」
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